みなさん、こんにちは!よこはまアイデアチャレンジ事務局の平井嘉祐(横浜市立大学国際商学部3年)です。
2021年4月6日、「第1回よこはまアイデアチャレンジ」に審査委員としてご協力いただいた当麻哲哉さん、秋山怜史さんのお2方にインタビューを実施しました!
「第1回よこはまアイデアチャレンジ」の総評からはじまり、ビジネスプランをつくるうえでのコツ、意識すべきポイントなどをお伺いすることができました。お2方ともとても優しく、終始和やかな雰囲気でインタビューを行うことができました。
今後ビジネスコンテストなどに応募される方におすすめの内容が盛りだくさんです!ぜひ、最後までご覧ください。
プロフィールのご紹介
インタビュー
1. 早速ですが、自己紹介をお願いいたします!
当麻 哲也 氏(以下、当麻):慶應義塾大学の当麻と申します。「第1回よこはまアイデアチャレンジ」の審査委員長を務めました。橋本さん(橋本綾子:よこはまアイデアチャレンジ事務局長)は元々私の教え子でした。第1回だったとはいえ、想定以上にいいコンテストになった気がしています。第2回はそれをさらに超えるものになることを期待しています。本日はどうぞよろしくお願いします。
秋山 怜史 氏(以下、秋山):一級建築事務所秋山立花の秋山と申します。「第1回よこはまアイデアチャレンジ」の審査委員を担わせていただきました。本当に第1回とは思えないくらいしっかりとしたプランがたくさん集まって、かつ実際に優秀な成績を収められた方が起業しているというのは本当に嬉しいことです。ビジネスコンテストは終わってそのままということが多いので、私としても「よこはまアイデアチャレンジ」のミッションである「横浜から起業家を出す」というミッションを全うできるようサポートさせていただきたいです。よろしくお願いいたします。
2. 今回、審査員をお引き受けいただいた経緯をお聞かせください!
当麻:私は大学でアントレプレナーシップの授業を10年ほど担当しています。私は専任というわけではなく科目担当で、実際にはロチェスター大学の先生が英語で行っている講義になります。ところがその方は一昨年で引退され、去年からは私ともうひとりの慶應の教授と2人で引き続き運営しています。
このようなアントレプレナーシップの授業の中で、今回の「よこはまアイデアチャレンジ」を企画者の橋本さんに依頼されたことがきっかけです。
彼女は元々私の学生だったのですが、その頃からエネルギー発散しまくりで(笑)。そんな彼女に「審査委員長を引き受けてくれないか」と打診されたことがきっかけです。やはり、彼女に頼まれるといやと言えないくらい押しが強かったです。
平井 嘉祐(以下、平井):いくら当麻先生の教え子である橋本さんとはいえ、企画自体が良くなかったら、協力を断ることもできたのではないでしょうか…(笑)。
当麻:それはそうです。これは、私がアントレプレナーシップ科目をやっているというのもありましたし、今年から「横浜未来機構」が発足しますよね。この前身となる「イノベーション都市・横浜」ですとか、その前のYOXOをつくる為の草の根会もあったし。その前にも草の根でやっていたものもあったりして…そんなこんなで5, 6年そこに加わって、みなとみらい地区と関内地区のまちづくりというか、再整備を横浜市と協力してやっていました。
特に昨年の横浜市役所が関内から馬車道に移転したときは、あちこちの貸しビルが空いてしまうことが起きてしまって、その空いたスペースをどう使うかを主に考えていました。クリエイターを呼び込んだりベンチャー企業を呼び込むなどして、なにかその街を若者で活性化しようというアイデアで進んでいたところにアイデアチャレンジの話だったので、横浜市の方にも協力をいただきながら参加した経緯があります。
平井:秋山さんはいかがでしょうか?
秋山:実は私はちょうどSDMが立ち上がったときの第一回ビジネスコンテストの優勝者でして(笑)。
当麻:あっ、そうだったんですね!確かに、やっていたかも。
秋山:そうなんです。私も「よこはまアイデアチャレンジ」のお話をいただいたいたときに、横浜って確かに人材はいるんですけど、起業しても都内に行ってしまいがちですよね。横浜の「地方都市感」が影響しているのだと思います。「横浜はいい場所だよね」とは言いつつも、どれだけの起業家が育っているんだろうと疑問に思います。そのような点で、やっぱり弱い部分があるのかなと思っているので、横浜でちゃんと成長していける起業家を増やしていくことはとてもいいことだと思っています。また、私は今年で40歳なんですが、27歳で起業してやってきたはいいものの、いろんなご縁をうまく活用する術を知りませんでした。人と人をつなげる手助けをしたいという気持ちで、審査員をやらせていただいているというのもあります。
私も非常勤で大学で教えているんですが、若い人たちがもっとアグレッシブに起業するような社会じゃないと、この国や地域が衰退してきてしまうなと思っていた中で審査員のご依頼を受けました。このようなビジネスコンテストを機会に若手の起業家と出会えるのは僕もすごく刺激をもらえると思いましたので、そういった意味でも喜んで引き受けさせていただきました。
3. 実際に審査をされていて、今回の参加者に抱かれた印象を教えて下さい!
当麻:最近の若い人の傾向なんですが、やっぱり社会のことをよく見てますよね。単に儲けたいというビジネス視点ではなく「これがどう社会に役に立つのか」という、社会に対してどう貢献できるのかという観点で考えているアイデアがほとんどでした。ほとんど全部のアイデアがそういうもので、素晴らしいことだと思いました。
平井:逆に言えば、一昔前の起業アイデアは儲けることが目的の中心だったということですか?
当麻:それが多かったと思うんです。どんな製品を作るかとか、プロダクトとかサービスが中心だったと思います。最近は社会課題を解決するということに随分重きを置いているなと思います。学校でもSDGsを使って教育しているところが増えているからかなと思います。それは社会人も学生も含めてです。社会人のほうがまだビジネスライクなところがあるかもしれませんね。でも徐々に社会課題解決という方向に向かいつつあると思います。
秋山:今まで社会に出てしまうと夢を諦めてしまうという流れがあったと思うんですが、最近だと本当に社会に出ても夢を諦めない人が出てきていますよね。逆に、学生の頃から夢を諦めてしまっているのがすごくもったいないなと思います。コンペなどへの参加を通して「できるんじゃん」「そういったアイデアがあるんだ」と言葉をもらうだけでも刺激を受けると思うんですよね。賞に絡まなかったとしてもです。そういった経験を得ることが大切なことだと思っています。そういった意味では、今回もっと奇抜なアイデア案が出て来ても良かったのではないでしょうか?
当麻:確かに、ちょっと奇抜なやつは少なかったかもしれないですね(笑)。
秋山:そうなんですよね。ホームランか三振かというアイデアがもうちょっと多いかなとも思ったんですが、ちょっとまとまりすぎなものが多かった点は少し気になりました。ちょっとまとまってないけど夢があるものを作れるのはすごく大切なことなので、いろんな方々からフィードバックをもらうという経験を大切にしてほしいです。
平井:「夢を学生時代に諦めてしまう」というのは1つキーワードになりそうだと思ったのですが、今回の応募されていない方々で、もしかしたらまだ夢がないという方もいらっしゃったのかもしれませんね。
当麻:そうですね。もしかしたら夢を持ちにくい社会かもしれません。最近はどうしても「実現可能性」とか「リアリティ」みたいなものを追求しがちですよね。そうすると、面白いものは出にくくなってしいます。
でも起業をしていくということは、今までにない事業・ビジネスを立ち上げていくということです。今までは、すでにあるものを使って起業することもできたのですが、そうするとたくさんのライバルの中で後発で頑張らなくてはいけないので、そういった意味で自分なりの夢を持って新しい分野に突入していくことが大事だと思います。そういったマインドをもっと持たなきゃいけないと思うんですよね。
今回の応募者の大半は、確かに現実的なものが多かったです。よく新聞に書かれているような課題を取り上げて私はこう解決したいと言っているだけなので「そういうところに気付いたんだ」「そういうところに目を向けたんだ」とかが出てくるともっと面白いなと思いますね。
秋山:事業計画出させるのって、意味がないと言っては語弊があるのですが、新しいことをやるときは事業計画もなにもない、というのを強く思います。「前例がないから書けません」くらいじゃないと(笑)。
当麻:確かに、それくらいないと面白くないですよね。
秋山:「絶対これをやり遂げるんだ」とか「お前らは気づいてないかもしれないけど、俺は気付いているぜ」みたいなのがないと、やっぱり突き抜けられないと思っています。そういった意味で、最初に事業計画を書かせるのはやめたほうが良くて、それよりも「何やりたいの?」「何成し遂げたいの?」「本気で思っているの?」ということの方がすごく大切になると思います。そういう本気度の高い応募者が集まればいいですね。
当麻:そういった新しいアイデアというのは、自分が体験した出来事から発見しているんですよね。ニュースで聞いたことではないわけです。自分がたまたま接した人が視覚障害者だったとかで、それをなんとか解決してあげたいというパーソナルな想いがスタート地点になっていると、世間で言われてるのとは違うアイデアが出てくるんですよね。
4. 新しいアイデアに気づくためのコツを教えて下さい!
当麻:これはやっぱり自分が体験するということです。人づてに聞いてきた情報やニュースではなく「なんとかしてあげなきゃ」という、自分の体験からくるものがスタートにないとダメだと思います。加えて現場をみることが大事です。本当の現場がどうなっているのか、現場を身体で感じ、目で見て、話で聞く……。そのように五感で感じたことから、すごくいいアイデアが出てくるはずです。やっぱり事業計画書のような経営の視点から入ってしまうとつまらないアイデアになりがちですが、それはダメなんですよね。
秋山:大体反対されるんですよ。僕も母子のシェアハウスを提案したときは、当事者団体含め、周りはほとんど反対でしたから。でも今では全国の事業者さんが家の中に組み込んでくださってるぐらいまでなりました。母と子が住むシェアハウス……思いつく人は多分何百人もいるようなアイデアなんですよ。でも何が違ったかというと、反対意見を言われて逆風が吹いた時でも一歩踏み出せたことです。本当にそれだけが差でした。
ではどうして一歩踏み出せるのか。それは、その道を「信じていたい」「本気でやりたい」ということなので、そこがないと何か言われたらすぐ諦めてしまう思います。
あと、本気で当事者のことを思っていないと相手を絶対説得できないんです。言葉に宿る力が全然違うので。それは経営の授業というより、自分たちのパッションをどうやって伝えるのかっていうところになってきます。パッションをしっかりと育ててあげて、やり遂げる勇気を与えてあげることが大切なのかなと思います。
当麻:秋山さんがそれを続けられたパッションってどこから来ていたんですか?
秋山:僕の場合はすごく小さい成功と小さい失敗を積み重ねたというのが大きいなと思っています。母子のシェアハウスとやり始めた時は、単純に「みんなで助け合っていけたらいよね」ぐらいのすごく簡単なところから始めたのですが、その当事者の方々とのヒアリングの中でだんだん自分ごとになっていきました。当事者と会っていく中で自分たちのやったことっていうものの意義をすごく感じるようになって、そこからは続けるしかなくなりました。
平井:それってまさに当麻先生がおっしゃったことと全く同じですね!
当麻:現場で当事者に会うってことですよね。
秋山:当事者の生の声を聞くであったりとか。そこですごく大切なのが想像力だと思うんですよね。想像力を持ってるか持ってないかでそれが継続した事業になるかならないかが決まってくるなと思っています。そういった意味では建築学科は想像力を鍛える為の学問なので、社会課題を解決していく「事業」と「建築」はすごく親和性があるなと思っています。
当麻:過去の建築学科というのは、やはり建物をつくるという「箱物行政」のような存在でしたよね。でも最近は建物の中に命があるというか、そこに住む人がいる、暮らす人がいる、あるいは訪れる人がいるという、人の動きが重要視されている気がします。そこを一緒に考えて建築するというのが本質なのかもしれないですね。
秋山:本当におっしゃるとおりです。よくハードかソフトかの議論があると思うんですけど、すごくよくなくて、実際はハードもソフトもないとだめなんですよ。ハードを動かすためのソフトがないとだめですし、ソフトがいくら良くてもそれを動かす為のハードがあったらより良くなっていく…。本当にどちらも大切です。
当麻:その2つの歯車がうまく噛み合わないと回らないってことですよね。
秋山:本当におっしゃるとおりです。
当麻:あらゆるビジネスで言えるんだと思います。建築だけじゃなくても、例えば携帯電話作ると言っても、ユーザーとの関連とか、そこに入ってくるアプリケーションとか、様々なソフト面も含めてものづくりをしないと。やっぱりソフトとハード両方噛み合うってことが大事ですね。
5. とはいえビジネスとして成功するには、具体的なビジネスモデルの構築や資金の話が欠かせないと思います。どのようにバランスをとれば良いのでしょうか?
当麻:それは段階があると思うんですよね。この「よこはまアイデアチャレンジ」は “チャレンジ” なので、もしかしたらビジネスプランなんか全く無くてもいいかもしれないですね(笑)。むしろ大事なことは、秋山さんもおっしゃるように、パッションだと思うんですよね。まずは「なんで僕たちはこれやりたいんだろう」という思いが人に上手く伝えれるかっていうところがポイントで、それで賛同者が現れてくると次第にビジネス的になって来ます。そこから「本当にこれは商売として成り立つのか」「自分たちはこれで食べていけるのか」ということをゆっくり議論して行けば良いかと思います。
一般によくやられてるビジコンはそこまで考えないと投資してくれる人がお金出さないですよね。でもこのビジコンの場合は、そこへ向かうための背中を押してあげるためのショーとか、あるいはちょっとした初期資金とかをお金寄付してあげるみたいなところがポイントだと思います。もちろん我々もビジネスになって欲しいと思って審査しているわけですが、本当にビジネスを目指してもらいたいというよりは、そのパッションより伸ばしてもらいたいということです。成功確率としては低くてもいいと思っています。審査の段階では、夢を大事にした人に賞をあげたいっていうところは私はありました。他の先生は違うかもしれないけど(笑)。
平井:先ほど秋山さんがプランを提示したけど皆に反対されたとおっしゃっていましたが、そのような人に向けたものがよこはまアイデアチャレンジなのではということでしょうか。
当麻:そうです、そうです。普通のビジコンだったらプランが十分じゃないからダメ、って落とされるものを拾ってあげるっていうか。「よこはまアイデアチャレンジ」はそういうところにこれからもフォーカスしたいなと思います。夢を持ってる人の背中を押してあげたいです。
秋山:あとはビジネス化するっていう能力とパッションをもって立ち上げる能力って、別に1人の中になくても良いと思います。
平井:確かに(笑)
当麻:ビジネス化するためのサポーターが現れてもいいわけですもんね。
秋山:そのとおりです。どこかのお金持ちが「あなたのパッション買います」とお金出してくれるかもしれないですし。お金を集める能力と最初にアイデアを立ち上げる能力は、決してひとりの中で集約されてなくてもよくて、多分今はいろんな起業のパターン見ても、それが一人の中に集約してる人ってそこまで多くないと思うんですよね。ただビジネスコンテストってなっちゃうとそれを一人の人求めるようになってしまうので、それは芽を摘んでいる可能性があります。
6. 最後に、次回以降参加される方々に向けて、メッセージをお願いします!
当麻:夢を思いっきり描いてほしいです。一番大事なのはパッションが伝わってくること、すなわち自分のオリジナルな気持ちが伝えられるかだと思います。世の中で言われている社会課題をただ語ってるんではないと。自分も体験した、心からやりたいっていう気持ちを語れる人に参加して欲しいなと思いますね。
平井:いわゆる社会のペインが原体験を持って感じられている人ということですか?
当麻:そうですね。また、ファイナンスだのお金集めるだの、ビジネス化に必要な色んなトレーニングなんかは、後でいろんな人がサポートしてくれたり自分で学んだりしてちょっとずつ成長していけばいいので、まずはやりたいっていうドライビング・フォースを持ち合わせないと結局ありきたりのアイデアだけで終わっちゃうのでね。誰よりも飛び抜けた面白いアイデアを期待したいです。
秋山:僕はもう本当にわくわくしたいです。「感心する」アイデアよりも「感動する」アイデアが欲しいですね。
当麻:素晴らしい!その言葉いいですね。
秋山:感心って頭が冴えちゃうんですよ。「あーそれそれ」「それいいね」ではなく、「こんなことがあったんだ」「こういう新しい見方があるんだ」っていう方がやっぱりワクワクしますし、応援したくなりますし、それを本気で実現したいなって同じ夢を見れるようになると思うんですよね。感心するより感動したい……本当にそう思います。
最後に
インタビューにご協力いただきました当麻さん、秋山さん、貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。
今回は「インタビュー企画第1弾」ということでお届けしましたが、現在第2弾、第3弾を絶賛企画中です。
今後もさらにたくさんの方々にお話を伺っていきますので、乞うご期待!